屋久島世界遺産地域科学委員会の会議が6月26日、環境文化村センター(屋久島町宮之浦)などのサテライト会場をネットワークでつないで開催された。
委員会は、屋久島の自然環境を科学的データに基づいて適切に保全管理するために、学識経験者らが関係行政機関に助言するもの。2009(平成21)年の発足以来、年2回程度、屋久島か鹿児島市内で会議を開いている。屋久島町は6月30日まで、新型コロナ対策として県外からの来島を自粛するよう要請しているため、今回はネットワーク開催となった。
出席者は、大学関係者に樹木医や写真家らを加えた14人の委員と、環境省、林野庁、鹿児島県、屋久島町など関係行政機関の職員30人。この中には、屋久島の自然保護官事務所、森林管理署(以上安房)、森林生態系保全センター(宮之浦)の11人が含まれる。
議事は、世界遺産地域のモニタリング調査、山岳部の保護と利用の在り方、花之江河など高層湿原の保全対策、世界遺産地域管理計画の見直しなどのテーマについて、担当行政機関から報告や提案があり、委員たちが専門的立場から意見を述べる形で進められた。委員からは、「口永良部島の噴火が屋久島に与える影響も調査すべき」などの意見が出された。
前日の25日には、科学委員会の下部組織であるヤクシカ・ワーキンググループの会合が開かれ、ヤクシカの生態や食害について詳しい調査報告があり、猟友会会長も参加して今後の取り組みについて意見交換が行われた。その概要が本会議で報告され、委員からは「ヤクシカだけでなく、ヤクザルについても詳しい調査が必要」といった意見が出された。
会議の閉会前には、屋久島における新型コロナの影響や町の対策が報告された。7月1日から県外からの来島が認められる。委員長の矢原徹一さん(九州オープンユニバーシティ)は「荒川登山バスは『密』を避ける対策が採られているが、宿での食事時の感染が心配。マダニを介する感染症SFTSは屋久島でも被害が出ている。新型コロナウイルスも島に入ってくるものと想定し警戒が必要」と締めくくった。