屋久島の最西端に位置する栗生(くりお)集落の生活館広場で11月23日、毎年恒例の「あらんばらぁ市」が開催された。
「あらんばらぁ」は話す相手に意図が通じなくてもどかしいときに使う栗生の方言。2000(平成12)年に地域振興を目的として始まった「あらんばらぁ市」は、今回が20回目。野菜、魚、工芸品、団子、郷土料理など、地域の住民が格安で出品し、多くの地域住民でにぎわう。開始30分前にはあちこちに長い行列ができ、地区の繁栄を願う千軒(せんげん)太鼓の演奏で市が始まると、1時間ほどでほとんどのコーナーには品物が無くなっていた。
サツマイモ、特に種子島特産の安納芋を使ったさまざまな手作り菓子が販売されていた。「芋のガネ」は細長く切ったイモを粉でまとめて揚げた菓子。「ガネ」はカニの方言で、カニの手に似ていることに由来する。そのほか、イモと餅を練り合わせた団子「ねったぼ」やすりつぶしたイモにデンプンと黒砂糖を混ぜて揚げたとても甘い「安納芋のつけ揚げ」が並んだ。材料の安納芋は、この日のために種子島から取り寄せ、1カ月かけて熟成させた。
あらんばらぁ市の名物だったカイノコ汁が、今年は豚汁に代わった。カイノコ汁は、イカ、鶏、塩サバ、ブタやサトイモ、ニンジン、ダイコンなど合計12~13種類の具材を細かく刻み、しょうゆとみそで味付けした煮物。「カイノコ」の名前は「貝」とは関係なく、細かく刻むという意味。栗生の郷土料理で、成人式の日には欠かせないという。これを継承しようと地区の婦人たちがあらんばらぁ市で無料提供してきたが、高齢化で具材を細かく刻むことが難しくなり、今年はイカが不漁だったこともあって断念した。「カイノコ汁を目当てにやってきた住民には申し訳ない」と、今年の豚汁も無料にして材料費は協力金で賄った。
栗生の次の大きなイベントは、2月25日に行われる栗生神社の浜下り。屋久島最西端の栗生から島に春の訪れを告げる。