屋久島高校演劇部が8月24日、東京の国立劇場(東京都千代田区)で「ジョン・デンバーへの手紙」を上演した。
7月27日から佐賀県で行われた全国高等学校演劇大会で九州ブロック代表として上演し、最優秀賞に次ぐ優秀賞を受賞した作品。屋久島の森林伐採に反対する青年たちが、伐採を告発する記録映画を製作したという実話を、演劇部顧問の上田美和さんが脚本化した。全国大会の創作脚本賞も受賞している。東京公演は、全国大会における演劇・日本音楽・郷土芸能の3部門それぞれで優秀な成績を収めた上位4校が、国立劇場の本格的な音響や照明など最高の環境で演技・演奏できるひのき舞台。
屋久島高校演劇部は、全国大会審査員の指摘を受けて舞台美術を作り直し、東京公演で最高の演技ができるよう猛練習を積んだ。東京に入ってからは現地の学校を借りて最終チェックを行い、本番直前のリハーサルでは、実際の会場で立ち位置や照明、音響など細かい確認を行った。舞台は順調に進み、予期しないカーテンコールまで受けた。幕が下りても会場からの拍手が鳴りやまず、それが手拍子となって会場に響いた。
上田さんは「生徒たちの努力が実って、全国大会を上回る素晴らしい出来になった。出演した生徒の演技はもちろんのこと、照明や音響、舞台を担当した部員たちも素晴らしい貢献をしてくれた」と話す。照明を担当した2年生の椎葉はなさんは「とても楽しく作業できた。慣れない機材だったが、レバー1つで簡単に操作できた」と笑顔を見せる。
会場には、部員の家族や教員、卒業生など、屋久島の人たちが少なくとも50人はいたという。主人公のモデルとなった屋久島在住の大山勇作さんは、約40年前に記録映画を共に製作した当時のメンバーらと共に応援に駆け付けた。「総勢20人ほどの演劇部員の旅費を捻出するために、島でイベントがあるたびに部員たちは募金活動を行い、皆さんが快く寄付してくれた」と上田さん。
「ジョン・デンバーへの手紙」は、9月に予定されている学内向けの発表会が最後の公演となる。教師役でジョン・デンバーの歌を劇中で披露した2年生の武石鈴香さんは「楽しく部活をやってきた結果、みんなと国立劇場で上演できたのは夢のよう。公演が終わるのは寂しいが、次のテーマに取り組みたい」と話す。「1人で歌うシーンはプレッシャーだったが、観客が涙していたと知ってうれしかった」とも。父親から借りた作業服で熱演した3年生の藤山聖也さんは「懸命に練習してきた3年間が、こんなに素晴らしい舞台で終われたのは最高。入学当初から指導していただいた上田先生に感謝している」と話す。