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屋久島町歴史民俗資料館で古文書に親しむ集い 島在住の歴史学者が易しく解説

まず受講者が自分で解読してみる

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 屋久島町歴史民俗資料館(屋久島町宮之浦、TEL 0997-42-1900、略称「歴民館」)で7月19日、屋久島に関連する古文書の講義が行われた。

今回の古文書の背景説明をする鎌田さん

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 講師の鎌田道隆さんは日本近世史が専門の歴史学者で、奈良大学の元学長。屋久島町楠川の出身で、大学退任後に屋久島へUターンした。現在奈良大学名誉教授。研究の傍ら、島民が古文書に親しむための機会を提供している。歴民館では本年度、5月~10月に毎月1回ずつ、各回1時間30分をかけて楠川地区に保存されていた古文書について講義を行っている。

 講義では毎回テーマを変えていて、今回のテーマは「流人」(るにん、島流しの刑に処せられた人)。まず背景となる「流刑」(るけい、島流し)について、屋久島における実情が簡単に紹介された。牢獄(ろうごく)に閉じ込められるようなことはなく、島内のいずれかの地区に振り分けられ、地区の住民の手伝いなどをして自活する。本土からコメなどを自分で持ち込むことも許される。流刑には年限がなく、恩赦などで放免されない限り、本土に戻ることはできない、など。

 背景が理解できたところで、当日配布された楠川古文書の出だしを鎌田さんが解説。この古文書は安政5(1858)年のもので、流人の身分証ともいえる「手札」(てふだ)を検査した際の記録。楠川に振り分けられた男女5人の流人の名前、年齢、宗派などが簡潔に記されている。解説の後、続きを受講者自身が解読。古文書の内容をワープロ文書にしたものも配布されていて、原文と見比べながら考え、20分ほどの後、受講者が1人1行ずつ読み上げた。

 受講に当たって古文書の知識は必要なく、常識的な日本語能力と歴史に関する興味さえあれば良いという。今回の受講者は13人。事前に用意した12人分の座席が足りず、補助席を設けた。講義の後には、屋久島でよく食べられている「あくまき」が振る舞われ、講義は終始和やかな雰囲気だった。

 鎌田さんは「屋久島は離島だが島の人たちは昔から外部との交流によって開放的。今回テーマにした流人もそのような交流の一端。講義を通して過去の資料をひもとき正しく理解することで、将来の在り方を考えるための材料にしてほしい」と話す。

 古文書の講義は8月~10月に計3回開催予定。参加無料。配布資料の準備があるため事前に歴民館に申し込むのが望ましい。

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