屋久島の全島民を鹿児島本土や熊本県に避難させるための国民保護共同実動・図上訓練が1月21日、実施された。
他国から武力攻撃の危険が迫ったときなどに備え、国、地方公共団体、関係機関が協力して住民を守るために行う訓練。2004(平成16)年に成立した「国民保護法」を受けて、2021年度から毎年どこかの県・市町村で実施されている。今年度は、移動手段が制限される離島からの避難、特に本土と直接の移動手段を持たない「2次離島」からの避難を検討するために屋久島町での開催となった。
避難計画では、屋久島の住民約1万1600人をバスで港と空港に移動させ、通常の交通機関であるフェリー、高速船、航空機で県本土などに運ぶ。しかしこの方法では全島避難に最低6日かかることが予想され、奄美航路のフェリーなどを活用することで2日間への短縮を目指している。
当初は、宮之浦地区の住民約200人を宮之浦港に実際に移動させる計画だったが、昨年11月末の米軍オスプレイ墜落事故への対応のために役場の準備が間に合わなかったため見送った。当日は、徳州会病院(屋久島町宮之浦)の入院患者、特別養護老人ホーム「縄文の郷」の入所者、高齢者福祉施設「老人憩いの家」の利用者を搬送する訓練を行った。
徳洲会病院では、入院患者に扮(ふん)したエキストラが移動用ベッドや車椅子で玄関ロビーに集合し、救急車や病院の車両で次々と搬送された。ロビーには消防隊員と医師が待機し、患者の搬送先の連絡や、気分が悪くなって病院に駆け込んできた一般住民役への対応を行った。ヘリによる緊急搬送の模擬訓練では、要請したドクターへリが手配できず、代わりに出動要請を受けた自衛隊輸送ヘリが宮之浦競技場に着陸し、救急患者に見立てたダミー人形を輸送ヘリに積み込んだ。
口永良部島で同時に行われる予定だった訓練は、早朝に小型船で向かった役場の担当者が荒天のため口永良部島に到着できず、中止になった。訓練計画では、全島民約100人が町営フェリーで屋久島へ移動するために港に集合したところ、急病人が出たためにドクターヘリの出動を要請し、消防隊員らがヘリポートまで患者を運び上げたり、残された消防団員を避難させるため、たまたま島の近くを通りかかった海上保安庁の巡視船が救助したりするシナリオを用意していた。
訓練終了後、環境文化村センター(屋久島町宮之浦)の大型映像ホールで、昨年末に導入されたレーザー光源デジタル4K映写機が投影する巨大スクリーンを使い、全国の関係機関を結んで訓練反省会を行った。