南九州に伝わる民俗楽器ゴッタンのトークライブ「甦れ!! ゴッタン」が10月29日、屋久島町歴史民俗資料館(屋久島町宮之浦)の網代小屋で開かれた。
屋久島在住の音楽家・あべ心也さんが語り、弾き、歌った。2012(平成24)年に移住し、義祖父の写真アルバムで大叔母がゴッタンを弾く写真を見つけて以来、ゴッタンにのめり込んでいった。島の古謡・民謡を愛し、自身の唄とともに島の内外でゴッタンの演奏を披露してきた。
ゴッタンは、三味線や沖縄三線に似た3弦の楽器で、胴は薄い杉板を使った箱形。名前の由来には、中国雲南省の三弦琵琶・古弾(グータン)や薩摩言葉の「ごったまし(たくましい)」など諸説ある。南九州の薩摩、大隅、日向地方に伝わり、かつては屋久島でも自宅でのんかた(飲み会)があると、床の間や押し入れから持ち出して伴奏したという。
歴史民俗資料館の収蔵庫には、2003(平成15)年に寄贈されたゴッタンが眠っていた。職員の黒飛淳さんが「楽器は鳴ってこそ楽器」と修復に乗り出し、弦の振動を胴に伝える駒(こま)を屋久杉で作り、あべさんが糸巻きを削り出し、弦を張り替えてよみがえらせた。あべさんは「何十年も眠っていたが、弾いていくうちにだんだんなじんできた」と話す。その音色を楽しみながらゴッタンについて学んでもらおうと今回のトークライブを開いた。当日は、会場の小さな網代小屋には島民20人以上が集まり、手拍子や唄で演奏を盛り上げた。
演目は、鹿児島のおはら節、屋久島の木挽(こびき)唄とまつばんだ、沖縄の安里屋ユンタ(奄美のちんだら節)とバラエティーに富み、間にゴッタンにまつわるトークを挟んだ。屋久島在住の歴史学者で奈良大学名誉教授の鎌田道隆さんはゴッタンを製作し演奏もする。ビデオメッセージの中で、「ゴッタンは生活をちょっと豊かにする物。時代の先端ではないが、人間らしさが込められている。杉の香りを嗅ぎながら復元すると、昔の人の知恵や工夫を学ぶことができる」と力を込めた。
最後に黒飛さんが「屋久島は生物の多様性で知られるが、人間の多様性も豊か。それを知る機会を今回のようなイベントを通して提供したい。島の誇りを取り戻すことで、これからの時代に何をつないでいくかを考える場にしたい。今日はその始まりだ」と締めくくった。