トークライブ「カクカクしかじか鹿物語~ヤクシカとマゲシカ~」が8月20日、屋久島町歴史民俗資料館(屋久島町宮之浦)で開催された。
馬毛島の草原で生きるマゲシカの群れ(遠くに屋久島の島影が見える)
マゲシカの剥製収蔵を記念して企画した同イベント。講師は、屋久島在住の画家でこれまで何度も馬毛島でマゲシカの調査に参加してきたという川村貴志さん。
この日は、同館スタッフの黒飛淳さんが収蔵に至った経緯を報告した後、川村さんがスライドと動画を使ってマゲシカの紹介と馬毛島における生態を報告した。川村さんによると、大半のヤクシカのオスはツノが2叉(さ)3尖(せん)(2度枝分かれして先端が3つ)だが、マゲシカはホンシュウシカと同様3叉4尖で、さらに大型のエゾシカは4叉5尖という。
歴史民俗資料館によると、マゲシカはニホンジカの亜種で、屋久島から40キロ離れた馬毛島(鹿児島県西之表市)に生息する。平安初期には馬毛島でシカの記録があり、1000年以上前から生息していたと考えられている。1925(大正14)年には阿久根大島(鹿児島県阿久根市)へ、1972(昭和47)年にはトカラ列島の臥蛇島(鹿児島県十島村)へ観光目的で放たれた。両島は現在無人島だが、島内で繁殖を繰り返している。馬毛島も1980(昭和55)年にいったん無人島になったが、現在は自衛隊の基地建設が進められている。馬毛島での生息数は数百頭といわれているという。
今回収蔵する剥製は、開業医の和田米夫さんが今年5月に寄贈した。屋久島の猟師の故笠井健志さんが約40年前に馬毛島で捕獲した一頭を京都で剥製に仕上げ、和田さんの自宅で長年保管していた。同館では現在、ヤクシカとホンシュウシカの剥製を所蔵・展示しており、今回からマゲシカが加わることになる。
和田さんは「笠井さんから聞いた話では、ヤクシカは山岳地帯の崖ややぶの中を走るため体が小さい。対してマゲシカは草原のシカなので、体がすくすく育ち大きい」と話す。一般には、ホンシュウシカより小さいといわれるが、歴民館の剥製はホンシュウシカとほぼ同じ体格。黒飛さんは「笠井さんの遺族の話から想像すると、馬毛島で捕獲したシカのうちでも最も大きく堂々としていたので剥製にして残したかったのでは」と話す。