尾之間温泉(屋久島町尾之間)で2月23日、地元の棒踊りをテーマにした顔出し看板の除幕式が行われた。
尾之間温泉は、湯船の底からこんこんと湯が湧き出ることで知られる。300年ほど前に疫病が流行した際、隣接する温泉神社に祈願したところ疫病が収まったことに感謝して、旧暦6月に尾之間温泉前の広場では棒踊りを奉納している。
完成した顔出し看板は、畳1枚ほどの大きさのアルミ板。棒踊りの踊り子十数人を描き、中央の大きく描いた2人の顔を切り抜いた穴から顔を出して記念撮影できるようにした。温泉を訪れた観光客に喜んでもらい、住民との交流のきっかけになればと、地元の子供会が制作した。
下絵に使った原画は、屋久島歴史民俗資料館に勤める黒飛淳さんが原寸大で用意。看板の絵は、子供会の小中学生14人が手分けして描いた。子供たちの記念になるようにと、各自の担当箇所には名前を書いてもらっている。
顔出し看板は観光地ではよく見かけるが、屋久島では珍しい。黒飛さんは、かつて役場の依頼で高速船乗り場に設置する顔出し看板を制作したが、合板を使ったために防水処理を施したにもかかわらず、屋外では数年で朽ちてしまったという。アルミ板は、雨の多い屋久島でも耐えられるようにと採用した。
看板の左下に手描きしたQRコードをスマートフォンで読み取ると、20人ほどが温泉の前で棒踊りを披露する10分程度の動画が再生される仕掛けも。同じく雨による傷みを考慮して、フィルムなどを貼らず、見本として印刷したQRコードを見ながらペンキで描き込んだという。
温泉前の広場で行われた除幕式では、看板の覆いが外されるのに合わせ、「祝顔出し看板完成」と書かれた小さなくす玉が割られた。地域住民や入浴客が次々と穴から顔を出して写真撮影する様子が見られるなど、手作り感満載のイベントは大いに盛り上がっていた。