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万葉集にもうたわれたナンバンギセル 屋久島のススキ原に点々と

下を向いて物思いにふけっているようなナンバンギセル

下を向いて物思いにふけっているようなナンバンギセル

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 11月に入り、屋久島ではススキを刈り取った後の草原に、ナンバンギセルが点々と顔を出している。

群生するナンバンギセル

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 漢字では「南蛮煙管」と書く。南蛮人(日本に渡来したポルトガル人やスペイン人の総称)がたばこを吸うためのきせるに花の形が似ていることから名付けられた。

 ススキなどの根に寄生する一年草で、自分で光合成ができないため宿主から養分を吸い上げて生きている。ススキの根元を探すと1~2本のナンバンギセルが見つかることがあるが、屋久島ではススキを刈り取った後の草原に群生していることもある。夏の終わりから晩秋にかけて、地面から数センチ~20センチの柄を伸ばし、その先に赤紫色を帯びた白い花を付ける。

 下を向いて咲いている様子が物思いにふけっているように見えることから、オモイグサ(思い草)の別名がある。万葉集には「道の辺の 尾花が下の思ひ草 今さらさらに 何をか思はむ」と詠まれている(尾花はススキの別名)。花言葉は「物思い」。

 屋久島総合自然公園(屋久島町宮之浦)内の野生植物園では、20鉢ほどのナンバンギセルを栽培している。宿主には、背丈が低く葉が細いヤクシマススキを使っている。同園でナンバンギセルの世話をしている鎌田重孝さんによると、鎌田さんが勤め始めた1995(平成7)年には、すでにこれらの鉢植えが植物園にあったという。以来、増え過ぎたときは株分けし、枯れ始めたら剪定(せんてい)する程度で、か細いヤクシマススキがナンバンギセルと共に生き続けている。

 11月初旬にナンバンギセルの花が終わると、乾燥した果実が残る。それをつぶすと粉のような種子が出てくるので、枯れたナンバンギセルを抜いた跡にまいておくと、翌年9月に花が咲き始める。これを繰り返すことで、鎌田さんは25年間ナンバンギセルを栽培し続けている。「ナンバンギセルにしてもヤクシマススキにしても、その生命力には感心する」と鎌田さん。

 入園料は大人=300円、小中高生=100円。町民は無料。園内の植物は購入できるものもあるが、ナンバンギセルは非売品。

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