屋久島西部林道沿いの半山(はんやま、はんにゃま)地区で11月1日、屋久島町主催の「世界遺産西部地域の森歩き」が開催された。
屋久島町、屋久島自然保護官事務所(安房、TEL 0997-46-2992)、屋久島環境文化財団(宮之浦、TEL 0997-42-2911)が共同で、町民を対象として年3回開いている「自然に親しむ集い」の本年度2回目。毎回講師を招いて、屋久島のいろいろな場所を散策し、自然を楽しみながら動植物の様子を知ってもらうのが狙い。
今回は、京都大学野生動物研究センター准教授の杉浦秀樹さんの案内で、西部林道にかつて存在した3集落の一つである半山を散策した。この地区にはヤクザルとヤクシカが多数生息し、杉浦さんたちがその生態を観察するフィールドになっている。
西部地域は伝統的に永田地区の所有で、永田の集落内で土地をもらえなかった次男、三男が出作り耕作を行い、それが定着したものといわれている。集落名が記録に現れるのは大正時代で、数軒程度の小規模な集落だったようだ。炭焼き、樟脳(しょうのう)製造、畑作などが行われたが、炭焼きは原木の大量伐採のため早々に衰退した。
今回の森歩きには、小学生から高齢者まで13人が参加し、7人のスタッフと京都大学の大学院生4人が支援に回った。一行は西部林道から半山川の右岸を下って行った。途中、炭焼き窯跡や畑や住居の石組みが残る集落跡では、陶器のかけら、瓶類、さびた鉄製の道具などが放置されていた。V字型の切れ込みがついた倒木は、「松ヤニを採取したもの」と杉浦さん。
海岸近くの開けた土地では、20頭以上のヤクザルがくつろいでいた。子ザルたちはツタに飛びついてターザンごっこやレスリングに興じていた。顔なじみの研究者がいるせいか、一行を恐れる様子はなく、参加者の足元に来て物珍しそうにのぞき込む子ザルもいる。この一帯のサルには一頭ずつ名前がついていて、杉浦さんや院生たちは全てのサルを識別できるという。
一行は2時間半の散策を楽しんだ後、西部林道に戻った。