火之上山埠(ふ)頭(屋久島町宮之浦)で8月3日~4日、ご神山(しんざん)祭りが開催された。
毎年この時期に開催され、今回が38回目。当初はかがり火を中心にしたものだったが、1994(平成6)年から神事が執り行われるようになり現在に至っている。主催は屋久島ご神山祭り実行委員会(松田清和会長)、屋久島町と屋久島町商工会青年部が共催。初日の益救(やく)神社(屋久島町宮之浦)の神事で始まり、舞台での演奏・演芸、屋台、花火、踊りなどのイベントが催される。
神事は「お水取り」で始まる。13時ごろ、神主と白装束の青年4人が、ご神水を宮之浦川上流でくみ上げる。場所は宮之浦地区から龍神(りゅうじん)杉に至る益救参道登山口近くの神の川(かんご)。竹4本としめ縄で囲った斎庭(ゆにわ、神を祭るために掃き清めた場所)を組み、神主が大麻(おおぬき)をかざしてご神水を入れるおけと参列者をおはらいし、米、塩、酒を混ぜた祓物(はらえつもの)をまいて宮之浦川の上流と下流に向かっておはらいする。その後、白装束の1人がたるを担いで河原に降り、水をくみ上げる。くみ上げたご神水は、益救神社の対岸にある川向い神社に夕方まで安置される。
19時前、神主たちが火之上山埠頭のメイン会場へご神水を厳かに運ぶ。勇壮な屋久島太鼓が鳴り響く中、ご神水が会場に到着すると人々の注目が一斉に集まる。会場中央のやぐらの前に設けられた祭壇にご神水を下ろし、祝詞、献饌(けんせん)・撤饌(てっせん)、玉串奉納といった一連の神事が行われる。
神主が祓物とお神酒で清めたやぐらに、白装束の青年たちがご神水を担ぎ上げる。神主も加わり、サカキを使ってやぐらの下に集まった人々にご神水を振り掛ける。ご神水のみそぎと呼ばれ、体に掛かると無病息災のご利益があるという。
やぐらの中央には地面から長い丸太が立ち上がっている。これを火おこし棒として使い、ご神火をおこす。100メートルもありそうな長い綱の中央を丸太に巻き付け、山側と海側から交互に引いて、丸太の底に摩擦で火をおこす。会場の人々が山側と海側の二手に分かれて綱を引き合うが、火をおこすにはスピードが肝心。やぐらの上からの「山引けー」「海引けー」の掛け声に合わせ、全力で綱を引く。「まだまだ足りん」の声に人々が次々に加勢する。「煙が出たぞ、もう一息だ」の声に、残った力を振り絞り、やっとのことで火がおきた。
ご神火はたいまつに移し、弓道の射手3人が待つ場所へ。射手はご神火を矢の先に点火し、30メートルほど先の砂浜に設置された巨大なかがり火台に向かって射る。数本ずつ放った後、1本が的中すると、次々と的中して盛大なかがり火が暗闇に立ち上がった。この火で水、火、風を清めるのだという。
祭りの人出は2日目の花火大会でピークを迎え、夏の訪れを告げて幕を閉じる。