梅雨も終盤の6月下旬、屋久島の「光るキノコ」が見頃を迎えた。
車を降りて森の中のぬかるむ道を20メートルほど進むと、「懐中電灯を消してください」とガイドの指示。目が徐々に暗闇に慣れてくると、足元にぼんやりと緑色の丸いものが見えてくる。エノキタケの柄を短くしたようなシイノトモシビタケ(椎の灯火茸)だ。すぐ横のスダジイ(通称シイ)の巨木を見ると、米粒ほどの明かりが地面から数メートル上まで無数に並び、ギンガタケ(仮名)が現れる。スダジイの落ちた枝が朽ち、そこにシイノトモシビタケが発生すると、ギンガタケの近くで見つかるという。
どちらのキノコも、5月下旬から見えるようになり、6月下旬が最も光が強く、7月上旬まで観察できる。シイノトモシビタケは、8月に入っても観察できることがあるという。屋久島には他に数種類の光るキノコが確認されているが、それらを一般の人が見るのは難しい。夜間は足場が悪くヘビやヒルもいるため、注意が必要と呼び掛ける。シイノトモシビタケとギンガタケは道路からすぐの所で観察できるのが人気の理由の一つだ。
ガイドの岩川俊朗さん(アウトドア屋久島ガイドシステム)は「明るいうちに森に入り、スダジイの巨木の周囲でシイノトモシビタケなどを見つけておく。真っ暗な夜に光るキノコをみると、そこに小さな宇宙が広がっているようだ」と話す。岩川さんによると、発光のメカニズムはよく分かっていないというが、「胞子を運ぶために昆虫を呼び寄せているのではないかと考えられている」。