屋久島・宮之浦地区で12月31日、伝統行事「トイノカンサマ(歳神様)」が行われた。
トイノカンサマは、屋久島最高峰の宮之浦岳から大みそかに下りてくる神で、各戸を回り、子どもたちの1年間の悪事をしかり、改心の誓いと引き換えに年を与えるというもの。
毎年、宮之浦青年団が運営を任され、宮之浦公民館や団員に申し込んだ家庭を回る。対象は、島の東、宮之浦地区に住む小学校低学年までの子どもを持つ世帯。
トイノカンサマに扮(ふん)した団員は白装束に身を包み、言うことを聞かない子どもを入れて山に連れていくための籠を背負い、手には長刀を持っている。その他の団員は、屋外で空の一斗缶をたたいたり、壁をたたいたりして大きな音を立て、恐ろしさを引き立てる。申し込みの際、氏名年齢のほかに「しかってほしい事柄」を伝えておくため、子ども一人一人に対し異なる問答が繰り出される。
1970(昭和45)年代に、20年間ほど途絶えていたこの行事を有志で復活させた長井三郎さんは「幼いころの記憶や年寄りへの聞き取りから、手探りで形にしていった。恐ろしい存在というものは、いつの時代も必要」と話す。