廃村50周年迎える小杉谷集落跡を目指す「秋の屋久島トレッキング」が11月14日、開催された。
屋久島環境文化研修センター(屋久島町安房)が主催する「自然・文化体験セミナー」の一環。コロナ禍で島内の多くのイベントが中止になる中、参加定員を10人に抑えるなど万全の感染防止対策を取って実行した。雨のため、送迎バスが荒川登山口に着くと全員雨具を着用し、トロッコ道の枕木にかぶせた道板で滑らないよう注意しながら小杉谷を目指した。
小杉谷は、かつて森林伐採の拠点として最盛期には133世帯540人が暮らし、小・中学校も設置されていた。しかし屋久島の森林保護が叫ばれる中、小杉谷の伐採作業が終了し、50年前の1970(昭和45)年に小・中学校が閉鎖されて住民は山を下り、廃村となった。
荒川登山口~小杉谷間は縄文杉登山の経由地だが、縄文杉へ急ぐ人たちは通過するだけのことが多い。そこで「秋の紅葉シーズンにのんびりトレッキングを楽しみ、トロッコ道沿線や集落跡で往時の生活に思いをはせよう」と研修センターのインストラクター小泉沙織さんが企画し、当日の案内役も務めた。
登山口を出発して間もなく、打ち捨てられたトロッコ機材が目に入る。「米国から船で運ばれる途中でさびだらけになり、苦労してさびを落としてやっと使えるようになった」と解説する小泉さん。トロッコが通る隧道(ずいどう)は、巨大な岩を発破で切り開いたという。
小杉谷では密を避けるため2班に分かれ、集落跡を巡る「小杉谷共生の森林自然観察歩道」を散策した。木造の建造物は残っていないが、石垣や階段、映画も上映したという公民館のドアの鉄製レール、診療所前のバリアフリーのスロープなど、往時の生活をしのぶ遺構を見ることができた。
山歩きが好きだという女性は、「友人たちと出掛ける時はこんな雨の日は避けるし、整備された歩道を歩く。団体行動のおかげで、雨でコケが美しい森を歩けて楽しかった」と話した。