10月下旬から急に気温が下がった屋久島で現在、ヤッコソウが顔を出している。
ヤッコソウはシイノキの根に群生する寄生植物。10月下旬から高さ5センチほどの白っぽい茎を地上に出す。茎の根元にはうろこ状の厚い葉(鱗片葉、りんぺんよう)が数枚広がり、その先に花が1本付いている。花の先端が頭、一対の大きい鱗片葉が袖を広げたように見え、大名行列の奴(やっこ)さんが練り歩く姿に似ていることからその名が付いた。漢字では「奴草」と書く。
キノコのようにも見えるが立派な被子植物。最初は花の先端が帽子をかぶったようになっていて、それが落ちると丸い頭が現れる。帽子は花粉が詰まったおしべで、丸い頭はめしべ。花からは蜜が出て、それが鱗片葉にたまり、蜜に引き寄せられた昆虫や鳥が花粉を運ぶ。地上に現れるのは11月中頃までで、12月に入ると姿は見られなくなる。
四国南部から南西諸島に至る海岸付近のシイノキ林などで見られ、1922(大正11)年に国の天然記念物に指定されている。1909(明治42)年に宮崎市南東部の神社裏で初めて発見され、日本特産の世界的珍種として発表された。発見場所は「内海(うちうみ)のヤッコソウ発生地」として1952(昭和27)年に国の特別天然記念物に指定された。
屋久島では、白谷雲水峡、千尋(せんぴろ)の滝、西部林道などで見られる。シイノキの根元の湿っぽい場所を探すと群生していることが多い。立った姿勢で見下ろすと目の前にあっても気が付かず、何本かのヤッコソウを見つけて周囲を見渡して初めて群生に気付くこともある。ヤッコソウを探す際は、誤って足で踏みつけないよう注意が必要。