快晴となった8月23日の午後遅く、天然記念物のカラスバトが屋久島の里で目撃された。
カラスバトは全身が黒いのでその名があり、屋久島ではクロバトとも呼ばれている。暗い森の中にいることが多く、色のせいか鳴き声は聞こえても目にすることが少ない。この日のカラスバトは、正面から真夏の太陽光を浴びて緑っぽく見えた。8月7日早朝にも目撃されており、その時は正面から朝日を浴び、朝焼けのような赤っぽい色に見えた。森の中では真っ黒に見えるという。
警戒心が強いと言われるが、この日は枯れ木のてっぺんにのんびりと止まっていた。しばらくするといったん森に消え、2羽が並んで飛び出てきた。カラスバトは雌雄同色なので、この2羽がつがいかどうかは分からない。2羽は真っすぐに、屋久島でよく見掛けるキジバトやズアカアオバトより速く飛んでいた。
カラスバトは、南西諸島や日本中部以南の離島に生息する大型のハトで、キジバトやズアカアオバトより一回り大きい。羽を広げて飛ぶときはさらに大きく見える。尾が長く、頭は体に比して小さい。ズアカアオバトが尺八のような悲しげな声で鳴くのに対して、カラスバトは押し殺したような声で「ポーッウ」とか「ウッウー」と鳴き、「カラカラッ」と奇妙な音を出すことがある。牛の「モーッモーッ」という鳴き声を少し高くしたようにも聞こえ、ウシバトと呼ぶ地域もある。
国の天然記念物に指定されているが、全国的には照葉樹林の伐採に伴って急速に個体数が減っており、環境省のレッドデータカテゴリでは準絶滅危惧種に指定されている。鹿児島県では、甑島、三島、種子島、屋久島、口永良部島、トカラ列島、奄美諸島などに生息している。