屋久島環境文化研修センター(屋久島町安房)の元インストラクターが、島内に生息するハサミムシを2年にわたって調査し、新規の6種を含む11種が生息することを報告した学術論文が現在ウェブで公開されている。
屋久島での生息が初めて確認された6種のハサミムシ(写真提供=渡邉さん)
調査したのは、今年4月から環境省阿蘇くじゅう国立公園管理事務所(熊本県阿蘇市)に勤める渡邉卓実さん。2021年に、それまで行っていた島内のクワガタムシの調査が一段落したころで偶然見つけたハサミムシが、まだ屋久島で確認されていないイソハサミムシだと分かった。以来、島内の広い範囲で、時には同僚や近所の小学生らも一緒に生息調査を行った。
お尻の先に大きなハサミがあり、雨の多い屋久島では石の下などでよく見かけるハサミムシ。国内では約30種が知られており、従来の調査で屋久島には6種の生息が確認されていた。そのうち、今回の調査ではイソハサミムシを含む6種のハサミムシが新規に確認され、屋久島に生息するハサミムシが12種となった。そのほとんどは国内で広範囲に生息するが、リュウキュウヒゲジロハサミムシだけは「調べた限りでは奄美以南でしか生息が報告されておらず、屋久島が生息確認の北限かもしれない」と渡邉さんは話す。
屋久島での調査結果は、鹿児島県立博物館研究報告に2編の論文として報告され、一般に公開されている。渡邉さんは隣接する種子島と口永良部島でも新規に2種ずつを確認し、鹿児島昆虫同好会の会誌「SATSUMA」で報告している。
渡邉さんは「湿度の高い場所を好むハサミムシに、屋久島の環境が適しているかもしれない。島の誰もがハサミムシを知ってはいるが、多くの種があることはほとんど知られていない。今回の報告が、自分の庭にハサミムシがいるかどうか、どんなハサミムシがいるか調べるなど、新しい発見のきっかけになれば」と話す。「今後は阿蘇から屋久島を応援し、阿蘇のためにも昆虫の調査研究をしていきたい」と意気込む。