屋久島町が発掘調査を進めている安房城跡で1月30日、住民向けの現地説明会が行われた。
事前に申し込んだ小学生3人を含む住民20人が参加した。健康の森公園(屋久島町安房)の集合場所では、教育推進課長の計屋(はかりや)正人さんから、安房城の起源は定かでないが平家落人説や種子島氏と戦った大隅半島の禰寝(ねじめ)氏が構築した説などがあること、今回の調査が地権者による開発に先立って遺構・遺物を記録保存することが目的であることなどが説明された。
安房川の右岸に位置する安房城跡は三方を川に囲まれ、唯一開けた西側を空堀と土塁で防御したといわれる。一行は土塁を切り取った小道を通って発掘現場へ移動し、現地で調査を指揮した濱岡尚志さんから説明を受けた。調査地は土を運び出すための通路によっていくつかの区画に区切られ、赤い土が全面に露出している区画はすでに調査済み。この赤い土は約7300年前の火山噴火で噴出したアカホヤと呼ばれる火山灰が積もったもので、その上に堆積した厚さ50センチほどの黒い土の層が調査の対象。所々に溝や柱の遺構らしいものが見える。
現場の脇には出土品の一部が展示されていた。大陸の白磁・青磁、徳之島のカムイヤキ、長崎の石鍋などの破片が並べられ、簡単な説明の後、参加者たちが手に取って感触を確かめた。
最後に、調査中の区画を実際に使って発掘体験が行われた。参加者たちは、表面の黒い土を削り取るためのねじり鎌、邪魔な木の根を切断するための剪定(せんてい)ばさみ、遺物を掘り出すための移植ごてなどを手に、作業員の手ほどきを受けて発掘に取り掛かった。遺物らしいものが掘り出されると濱岡さんが駆け付けて遺物かどうか判定し、遺物であれば目印の小旗を立てる。わずか15分ほどの間に白磁片など3つの遺物が見つかったが、掘り出したものが石だと分かりガッカリする場面もあり、熱気と笑いに包まれた体験会となった。
最近移住してきたという女性は「屋久島には山と海しかないと思っていたのに、こんな城跡があって驚いた。屋久島の文化や歴史も学んでみたい」と楽しげに話していた。